初代バルキリーの登場は衝撃的でした。F-14ばりの戦闘機(航空兵器)が、一瞬でロボット(人型兵器)に変形したからです。何気なくつけていたテレビ画面の中で一体何が展開されているのか、頭の中の理解が追いつかず、ただ茫然と見入っていました。当時の興奮と情景は、今でも鮮明に記憶に残っています。その初代バルキリーの優れた変形機構を、正統に継承・発展させたのが、このバルキリーⅡです。
アニメ作品の構成や内容はともかく、「バルキリー」という一つのメカデザイン・ジャンルは、河森正治氏の卓越した発想と創造性の賜です。彼の業績は、誰もが認めるメカデザイン史上の大偉業でしょう。しかし、初代以後のデザインワークで、私が残念なのは、航空兵器に精通した河森氏であるが故に、デザインの主軸がファイターモード(戦闘機形態)に偏り過ぎている感が否めず、「ファイターはカッコ良いけど、バトロイドはカッコ悪い」状態に陥っているということです。
バンダイのZガンダム・モデル開発陣は、ウェイヴライダー(大気圏突入形態)時の機体を上下に薄くすることに尽力し、少しでも航空機然とさせるべく創意工夫しています。各モードの「らしさ」を強調するのは当然の作業です。ただ、初代から今日まで続く一連の河森バルキリーは、ファイターモードを現用航空機のスタ イルに近づけるあまり、バトロイドモードの造形美のみならず、河森氏自身が独創した変形機構の優位性さえも破壊してしまいました。
私が認識しているバルキリー変形機構の優位性は、それぞれのパーツがブロックごとに位置を移動するだけで、全く別の形態へと変化する方法にあります。各ブロックをさらに細かく切り刻んで分解し、戦闘兵器としての強度などお構いなしで、航空機の形状を無理やり人型に変形させる手法は、「バルキリーのトランスフォーマー化」に他なりません。「折り紙細工」へと堕落した最近の河森バルキリーに、残念ながら初代の頃の輝きや鮮烈さはもう存在していないのです。
その点、バルキリー「Ⅱ」は正に「二代目」であり、初代バルキリーの変形原理を正しく継承し発展させた「嫡子」(正当な後継者)と言えます。従って、「初代⇒Ⅱ」の系統こそがバルキリーの本流であるべきです。物語の作者やデザイナーの都合で云々すべきものではありません。ところが、アニメファンの論理で物事が動いているためか、河森氏が異様な権力と理不尽な影響力を発揮しているように見えます。マクロスⅡに彼が関与しなかったからといって、正史から暗黒史へと葬り去ったのも、氏の意向ではないかと勘繰ってしまいます。
そもそも、一旦世に出された「ブランド」は、決して作者個人の所有物ではありません。ブランド化した知的財産は、それを育んできた全てのファンのものです。彼らが自分の内部に抱くものを、「ブランドイメージ」と呼びます。つまり、ブランドとはファンが創り上げていくものなのです。日本の製造メーカーや制作者等には、この道理が理解できない体質や風潮がはびこっています。一模型ファンとして、バルキリーⅡが正当に評価され、アニメのメカデザイン史上における最高傑作の一つであると、広く認識されることを切に望んでいます。
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