マクロスⅡの登場メカで、バンダイから唯一発売されたプラモデルが1/100 「バルキリーⅡwith S.A.P.」です。残念ながら、腕と足はS.A.P.パーツ一体形成で、バックパックはオミットされています。そこで、その3個所をキャスト製キットに取り換えることで、美しいスタイリングのノーマルタイプが再現できる改造パーツです。ただし、元のプラモデル(with S.A.P.)では翼が開かないことと、本キットのバックパックが可動しないことから、三段変形はできません。原型は佐藤文和氏です。
「機体解説」ページで触れたように、バンダイがプラモデル開発に着手した当初、1/100の三段変形バルキリーⅡはシンプルでスマートなノーマルタイプが、当然のごとく企画されました。しかし、どういう事情からかお蔵入りとなり、結局製品化されたのは大仰で醜いバックパックを一体装着した、いわゆる S.A.P.(スーパーアームドパック)タイプだけでした。
アニメ本編でノーマルタイプを確認できるのは、大張正己氏(ダンガイオーや大張版ドラグナーで素晴らしいデザインワークを披露)の手になるオープニングとアイキャッチくらいです。そんなひどい扱いなら、いくら模型メーカーのバンダイと言えども、アニメファンの論理に立ってS.A.P.タイプを先に商品化してしまったのも致し方ないでしょう。しかし、その事とノーマルタイプを商品化しないことに、模型ファンを納得させるだけの論理的因果関係は認められません。両方を商品化すればいいだけですから。どちらを選ぶかの選択権は、我々消費者にあります。
最近のバンダイは、同じモデルの単なる色違い(ストライクルージュやトランザム等)をあたかも別商品のように販売し、本体に後から装着できる各種パーツ(オーライザー等)も独立した商品として扱っています。今のバンダイなら、最初にノーマルタイプを4種のカラーバリエーションとして発売し、装着自在なS.A.P.パーツを別商品として発売するでしょう。
私の勝手な想像ですが、バルキリーⅡの秀逸なメカデザインを十分認識している当時のバンダイ開発陣が、模型ファンでなくアニメファンの論理に押されて、ノーマルタイプの三段変形プラモデルを商品化できなかったことへの悔恨の念と、バンダイという模型メーカー(アニメ制作会社ではなく)として、消費者に十分な責任を果たせなかったという自責の念によって、かろうじてBクラブから発売にこぎつけたのが、このノーマルタイプ改造パーツだったのではないでしょうか。
ベースになるプラモデルが、翼の開閉しないS.A.P.タイプなので仕方ありませんが、このパーツを取り付けることで、少なくともメカ画稿に描かれたバルキリーⅡの美しいフォルムは、何とか再現可能です。バルキリーⅡファンにとっては、本当に「救い」です。当時の開発担当者の「良心」がひしひしと伝わってきます。
バンダイには是非、技術の粋を集めた 「VF HIGH-METAL」 シリーズでVF-2SS バルキリーⅡを復活させて欲しいと切に願っています。辛うじてバンダイの面子を保った開発担当者の「良心」に報い、約20年間無責任に放置してきた模型ファンの「期待」に正面から応えるためにも、最新技術でバルキリーⅡプロジェクトを完結させていただけないものでしょうか。
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